JINDAIJI MOUNTAIN WORKS

2022/07/27 11:16



潮騒で目が覚めた。

南伊豆の名も無き小さな岬。完璧なロケーションもその鞍部に作った寝床は風の通り道だったようで、最近よく使っている試作品の化繊キルトをびっしょりと濡らしていた。持ってきていたにもかかわらずビビィを使わずに寝てしまった事を後悔しつつ、日の出を待った。

この季節、太陽が登れば一瞬で乾くだろう。太陽は偉大だ。

今日は南伊豆をグルリと回り込み、下田の隣にある河津という町からの修禅寺行きの最終バスに乗り込むという予定だった。初めての土地でのライド故にタイムスケジュールが組みくいけれど、まぁ、何とかなるでしょ。

南伊豆なら石廊崎だよね、なんてノリで南を目指して漕ぎ始めたものの、気温の高さと小さなアップダウンの連続に早速フィジカルの不安を感じ始めた。 
帰着時刻が決まった旅は自由度が無くなるから嫌いだ。しかし、僕らはあと数キロ先の国道の分岐点で決断しなければならない。

石廊崎に観光に行くか、もしくは峠越えコースで下田に出て金目鯛の乗った海鮮丼を食らうか。

どっちもだ。

僕らは国道の分岐を迷う事なく石廊崎、と書かれた方向へペダルを踏み込んだ。

石廊崎までの道は基本下りで交通量も少なく(ほぼゼロ)最高なクルージングだった。ただ、ロードサイドに商店は無く、自動販売機も無い。もし、南伊豆に自転車で行くのならば食料と飲料水のマネジメントはかなり重要だ。なぜなら僕らの水と食料は朝から底を突いていたのだ。そして何とか有人のガソリンスタンドを発見、挨拶をして施設内の自販機で水分補給をした。

何も期待していなかった石廊崎(何故か三田正明が行きたがっていた)は圧巻であった。そして僕は売店のベンチでコーヒーフロートを何十年ぶりかに食べた。

石廊崎から計算しても河津の修善寺行きバスの最終便までは少しだけ余裕が作れそうだった。と言ってもギリギリだけど。石廊崎から下田まではの道も素晴らしく、これぞペニンシュラ、といったロケーションが続く。そして一旦、内陸部の集落を通過して下田に降り立った。 
下田の町をクルージングしながら見つけた「魚でめし」という海鮮飯屋で下田丼という金目鯛の乗った丼とアラ出汁の味噌汁をオーダーした。大盛り無料。美味しかった。

時間的に余裕が出来たので白浜に行くことにした。伊豆白浜は僕が学生時代に毎夏、サーフィン合宿で通ったサーフだった。シーズン前の白浜は閑散としていてプライベートビーチのようだった。風景や街並みも30年前の記憶ともあまり変わっていなかったのが嬉しかった。

浜から上がりベッドロックサンダルに履き替えて河津へ向かう。旅の終わりが近づいてきた。海岸線の国道は緩やかにアップダウンを繰り返す。

メンテナンスされたベアリングは自転車を良く転がしてくれて少ない労力で前へ前へと転がっていく。 
いくつかの岬を越えると対岸の河津のビーチが見えてきた。旅のゴールに向けて自転車は海岸線を縫うように降っていく。 
ベアリングは偉大だなぁ。僕は愛車のクロスチェックとの最後のクルージングを楽しんだ。

1泊2日のバイキパッキングで行く伊豆半島。西伊豆、南伊豆、東伊豆、それぞれの特色と地形変化。自転車は良いなぁ。上り坂も下り坂も、稜線も平地も全部体で感じることが出来るなんて。

修善寺行きのバスに揺られながら2日間の行程を思い出してニヤニヤしていたら途中から乗り込んできた集団下校の小学生の男の子の怪訝そうな視線を感じた。僕はニッコリと微笑みがえしをして、誤魔化すように瞼を閉じた。

終旅。

Day 2

走行距離:62km 
累積標高:986m↑ 982m↓

Bike packs 
frontpack:JMW pannierboy pack 3 
saddle: JMW saddleboypack1 
with JMW mountain pads

Wear 
westanrise longsleve shirts 
tacomafuji cotton T-shirts 
yamatomichi short pants 
hiker trash merino socks 
vivo bearfoot ra2

waist pouch:JMW funny mae pack

Cooker 
JMW hillbilly pot 550 
MSR pocket rocket2

Sleeping Quilt 
JMW UL summer quilt

etc...

2日目の総評:豊な自然と海岸線、海鮮丼(美味しい)

旅の相棒:三田正明(写真家、ライター、山と道ジャーナル編集長など)


(6/27/2021)