JINDAIJI MOUNTAIN WORKS

2022/07/27 12:03


This Could Be the Start of Something Big!

アパレル始めるなら生産背景を持っていないと出来ないよ、って思うよね。普通は。でもそんなレベルだから生産背景、なんて言葉すら知らなかった。だってシェルターメーカー以前もアパレル業界やメーカーで生産管理の経験とか無かったしら日本の生地商社や縫製工場なんて繋がりは無いし。それ以前に服の縫い方なんて学んだ事もない。もう全部独学。前職のシェルター作りだって同じ。縫製研究を行いながら試行錯誤の中で完成度を上げていくしかない。バッグの作り方を教えてくれる専門学校もメーカーも工場はあれど、ULシェルターの作り方を教えてくれる学校なんてある訳でもないし、メーカーも工場も無い。まして寝袋やインサレーションウェアの作り方を教えてくれる学校なんてのは無い。 
縫製だけでなく、ミシンの事(直線、上下送り、腕、閂、そして押えにラッパの種類)糸調子やピッチの関係。針、糸の番手や種類などもやはりMYOG時代も含めて試行錯誤の中で独学していくしかなかった。

そんな中で数少ない教科書としてスルーハイカー.comというアメリカのウェブショップにプルオーバージャケットのパターンがあった。僕はそのパターンで化繊インサレーションウェアの構造を一通り学んだ。いや、暗号文みたいな手引き書の解読に成功した、と言った方が正しいかもしれない。 
化繊インサレーションウェアの、あの縫い目が表に出ない縫い方とかどうやって縫うんだよ!って思うよね。 
ここのパターンは購入すると手引き書のようなメモ書きに毛が生えた様な解説書が載ったアドレスが与えられて、それをダウンロード出来る様になっていた。

この解説書がかなりいい加減で縫い方とか知りたい肝心な事は何一つ書いていなかった。縫っては解いて、バラして縫い直す、を何度も繰り返した。画像もいい加減だし、注の振り方も酷かった。これで完成できる奴なんているのか?なんて途方にくれたよ。何度か放り投げながらも数週間後にはそれっぽい、"綿入りの服”らしい代物が仕上がった。

そんな仕上がりでも僕にとっては大きな第一歩だった。だって化繊のインサレーションウェアが自分で作れちゃったんだぜ?買ったら3万円以上するのに。この時に思ったよね。MYOGは凄い。これは何かヤバい事が始まるぞ、ってワクワクしたのを覚えている。

実際にハイキングに行く時はいつもバックパックに詰め込んで色々なところを歩いた。ポケットが無くて不便だったけど、そんな事はどうでもよかった。そもそもバックパッキングは不便で忌々しい事の連続なのだ。

僕のミシンと物作りの考え方の基礎はレイウェイのバックパックとスルーハイカーのこのパターンで学んだ(中でもレイウェイからは針や糸の事が学べた。これはかなり重要な事だった)。

この前、久しぶりにスルーハイカーの解説書を見たけど(アドレスは生きていた)やっぱり何を言っているのか全く理解出来なかった。ある意味、アメリカすごい。

インサレーションウェアの構造は何となく理解は出来た。あとは三鷹のハイカーズデポに行って色々なメーカーの化繊インサレーションウェアを片っぱしから裏返してどこで閉じているのか、外内生地の縫いあわせ場所などをチェックするだけだった。(その中でもモンテインの化繊インサレーションウェアのテクニカルな縫製ギミックが素晴らしかったのを覚えている。何てモデルだったんだろう。かなり昔の話だけど一応、記述しておく)

その調査で学んだ(盗んだ?)知見とプルオーバーのパターンを使い、再び、インサレーションウェアの製作に取り掛かった。今度はウエスタンマウンテニアリングのフラッシュフーディの様な明るい青色の生地を仕入れてプルオーバーを製作した。生地は30dのモメンタムという比較的安価なB級ブリーザブル生地を使った。縫い目が表に出ないパズルを組むような縫い方で、それはまさに魔法の様な縫い方だった。上手く仕上げられなかった一着目よりも二着目はそれなりに仕上げる事ができ、晩秋の八ヶ岳でも冷気から体を十分に保温してくれた。

化繊というのはダウンと違いラフに扱える自由さはトレイルライフにおいて精神的安心感がありハイキングに集中する事が出来た。

二着目はパターンを少し弄って、ゆったりとしたビッグシルエットに修正を行い縫製してみた。にも関わらずあまり変わらない着心地とアンバランスなシェイプになってしまった。パターン修正は未だに苦手だし、奥が深い。

当時、参加していたシェルターメーカーで化繊のキルトを作るとなった時も、直接設計には関わらなかったけれど化繊インサレーションプロダクトの研究は行った。素材、縫製、ギミック、そしてシェイプやサイジングを含めたパターンの研究等。そこでスルーハイカー.comで製作したインサレーションジャケットの経験が大いに役に立った。

前職で製作した化繊キルトは軽量で自由度の高いラップタイプのキルトで発売後には幾つかの改良点を見出していた。次回の2ndロットで反映できれば更に良くなるぞ、と準備をしていた。しかし初回ロットが完売した後、アップデートする事なくディスコンにしてしまった。化繊のキルトの次はダウンの寝袋をやりたかった。ダウンプロダクトの縫製やダウン封入の方法も研究していたけど、化繊キルトがディスコンになりダウン寝袋計画も白紙になってしまった。これは今でも残念に思っている。

そんな当時の製作経験や研究の背景がJMWにはあった。だからJMWを始めた当初から、いつかは化繊インサレーションギアを、と思っていたし、僕にはその資格がある、なんてずっと思っていた。

そしてJMWが始まり、その機会はすぐに訪れた。縫製のワークシェアをしてもらえる人を探している、と人伝に聞いた友人からN君を紹介された。彼は縫製もパターンも引けるアパレル畑の人間だった。化繊インサレーションのアノラックを作りたい、と相談をしてみると「面白いですね、やった事ないけどやりましょう」と言ってくれた。

僕は中断していた資材の研究を再開をした。

先の化繊キルトでも採用していた某一流化繊インサレーション某PリマLフトとか某Pテックスを使う事を考えていたけど、そこのハンドリングをしている日本商社はJMWのような個人事業主の弱小メーカーは相手にしてくれないし(生地の見本帳すら送ってくれないんだよ!)。少量のサンプルなら海外の生地販売のwebショップでも買えるけどMYOGじゃないし小売り生地の価格じゃまともに勝負出来ない。もう少し話聞いて相手してよー、なんて泣き事言ってる暇は無いのでさっさと動く。

今お付き合いをしてる日本の商社さんみたいにちゃんとお付き合いしてくれる所もある。でも殆どは個人趣味ブランド的な見方されちゃうんだろうか。仲間の、それなりにスケールあるメーカーは取引してる所もあるから、頑張ってJMWの規模を上げるしかない。小さいから仕方ないよね...。いや、アメリカや中国のメーカーや商社は極東の小さなメーカーJMWの話をちゃんと話聞いてくれるぞ。中国の商社の勤勉さなんて。休日だろうがなんだろうかメールのレスが早い。被せ気味に返信がくる。このレスポンスの速さをみていると日本は抜かれちゃうよな、なんて思ってしまう。アメリカの大きなメーカーも見本帳をちゃんと送ってくれたり代理店を紹介してくれるのに。 
この違いは何だろうか。日本企業は大手企業に注力する、アメリカは伸び代ありそうな小さな所に貸しを作って稼げる様に育てる、みたいな違い?そんな感じがしてる。事実、お前ん所は小さいからそんなに要らないだろ?小さいロットでも出してあげるよ。その代わりデカくなったら俺な株買わせろよな、みたいなのあるし。

デカくなって見返してやる!って言いたいけど、生地素材はベンチャーが台頭してきているからね。もう他の新しい素材を探すよ。そんな大手しか相手してないと気付いた時には水風呂になってるかもしれないぜ?なんてね(お前もな)。

あと、海外メーカーと取引きする時にメーカーのSNSはかなり役に立つ。特にInstagramは名刺代わりになる。

ブランドイメージというか世界観ってのは何か形にして出していかないと伝わらない。JMWのInstagramは伝販売告知のポストでもハイキングのTipsやフィールドレポートも一緒に添えてるし、写真も使い回しではなく、リアルな季節感ある山を撮影(遊び?)しポストしてる。これもユーザーさんに向けての意味と対外的にJMWの世界観を伝えていく為でもある。自分自身でマウンテンワークスの意味を常に再確認するためでもある。

当たり前だけど、遊んでなければ遊び道具は作れない。マーケティングとリサーチだけで製品作りは出来ない。マウンテンワークスを名乗っている以上、そこは意識している。プロダクトのリアリティ。だからJMWは販売まで時間掛かる。まぁ、そこはなんとかしたい(笑)。

だから海外メーカーと初めてやり取りする時はInstagramのアカウントを一緒に送ってる。JMWが何者か相手に伝えないと異言語コミュニケーションは始まらない。

で、やっぱり向こうの担当者もウチのInstagramを見て新たな提案とかくれるんだよね。お前の所はチタンフォイル販売してるならデータよこせばオリジナルな風防作れるぞ、とか。ハンモックスリングでこんなのあるけどサンプル要るか?とか。そこから製品化が進む事だってある。

日本の商社からそういった提案や営業はないからJMWはまだまだ足りないんだろうな。でも伸び代くらいは見てよ(笑)。もう少し大きくなって振り向いてもらえる様に頑張るしかないね。

まぁ、泣き事言っても何も変わらないし、そんな事はもう慣れっ子になので、資材は海外のメーカーや商社から直接調達する事になる。今回は上手くいくかな?

JMWの資材調達はいつもこんな感じ。 
まずは海外の素材メーカー(超メジャーな会社でもガンガン行くよ)に直接メールを入れる。

「私は日本でキャンプギアを製作しているJMWのデザイナー、尾崎です。私達には御社のマテリアルを活かす素晴らしいアイデアか幾つかあります。ぜひ、協力してもらいたい云々…」

駄目元でも小さなメーカーでも胸張ってあたる。

さぁ、どうなるか。

すでに僕はある、新しい化繊インサレーションに目を付けていた。

続く。

それゆけ!カンガルーアノラック奮闘記 その1 
https://jindaijimountainworks.com/news/61ac0d679eadbe383d909068

(2/21/2022)