JINDAIJI MOUNTAIN WORKS

2022/07/27 12:04

もう2年ばかしずっと考えていたので僕は分かった気になっていたけどカンガルーアノラックの解説を全くしていなかった!

12月の桜3丁目での受注会の時もそうだし、高尾JAMの時も現場で解説をしてオーダーを取っていました。もちろん、説明を聞いた後で興味なければオーダーしなくても大丈夫です、と言ったりしてんですけど、みなさん、納得してくれてオーダーを頂けました。

でも、ちょっと親切じゃないよね、とはずっと思っていたので、3/12,13の名古屋Pot での「Groovin'Jindaiji Vol.1」の受注回の前に、カンガルーアノラックの最低限の解説だけさせて下さい。更に詳しい解説は当日に実演しながらお話しします。いや、ガッツリ説明させて下さい!

で、なぜ、今まで解説を書かなかったのか、って言うと、テキスト化するのが難しい、という事に付きます。

ただの、カンガルーポケットの化繊インサレーションウェア、と思う人も多いと思いますが、このカンガルーアノラックには、JMWのULギアクラフトマンとしての矜持、第二次アメカジ直撃世代の僕個人の嗜好、そしてJMWの根幹でもある、UL思想、などががごちゃ混ぜになって、めんどくさい程、色々と練り込んであります。

”欲しいけど、無い。だから創る”

え、あるじゃん?って人がいたらごめんなさい...って、え?あるかな?w

そんなマニアな人にこそ、JMWのカンガルーアノラックのディテールを見て着て触って欲しいです。そんな僕のカンガルーに対する想いを最後まで聞いていって下さいな。

それでは、ここから真面目に解説行きます。


Fabrics:15d Nylon Ripstop

Insulation:Climashield Apex2.5oz

Size:S,M,L,XL

Weight:300g〜350g(stuff sack含む)


S size 

肩幅45cm 身幅53cm 着丈74cm 袖丈60cm 重さ300g(±10g)

M size

肩幅48cm 身幅56cm 着丈77cm 袖丈63cm 重さ320g(±10g)

L size

肩幅51cm 身幅59cm 着丈80cm 袖丈65cm 重さ332g(±10g)

XL size

肩幅52cm 身幅60cm 着丈82cm 袖丈68cm 重さ350g(±10g)


10 Colors 
reversible 
Price:¥42000(+Tax) with 3color Custom

まずは設計思想から。

「ハイカーの為のビレイジャケット」

ん?ビレイってハイキング関係なくね?って思うよね。そうです。関係ないですw

この話をするにはULバックパッキングで使われるインサレーションウェアの話からしなければなりません。

ULハイカーが求める「軽くて小さくなる」防寒着。アルパイン系ウェアの中ではタフな仕様であったり、少し大袈裟であったりと、探すのは意外とむずかしい。

そして、ULハイカーはこの条件を満たす防寒着としてクライマーのビレイジャケットの中に見出しました。

このビレイジャケットの特徴的なディティールに「ショート丈」というのがあります。これはウエストハーネスに干渉しない為であり、また、コードで絞ってハイウエストにたく仕上げてハーネスとの干渉を抑える事ができるようなデザインになっています。

ULハイカーに人気のダウンジャケット、フェザードフレンズ社のヘリオスフーディ。このダウンジャケットがショート丈である理由はビレイジャケットとしての設計思想が反映されてるから。

逆にビレイを行わない者にとって、ショート丈は使いにくい。下に着ているベースレイヤーをずり上げてしまったり、また座って食事を摂っている時には背中を露出させてしまったり。

そんなハイカーの為にテント場でのレストに特化したインサレーションウェアを考えました。

それが

「ハイカーの為のビレイジャケット」

という新しい概念。

ハイカーの停滞時(クライミングでいうビレイ時と想定する)をテント場での疲労を取り、明日のハイキングに備える。その時に着るインサレーションウェア。

濡れてもロフトが潰れない、という化繊綿の特性は、主に行動着として採用される事が多い。そんな化繊綿を、あえてのレスト方面で用いる。リラックスする為の、そしてイージーケアの化繊綿。無意識のうちにデリケートな扱いをしてしまうダウンジャケットではなく、リラックスする為の化繊綿という選択。

そういった濡れに強い、という1点から化繊インサレーションウェアは行動着としての思想が入り込んでいるので比較的タイトなシェイプのものが多い。

カンガルーのゆったり目のシルエットは、着疲れしないユルさ、であったり、ハードシェルの上から羽織れたり。 
今までそういったプロダクトは主にダウンジャケットであったり、バックパッキングには向かない嵩張るものが多い。

ULバックパッキングで使える、軽くてシンプル。そして明確なコンセプト。その為のデザイン。

それが、カンガルーアノラックです。

では、次にディティールについて。

カンガルーのフードは調整用コードを廃した代わりにバラクラバスタイルの深いフードデザインを採用しました。

フード周りの調整用コード類を廃しました。理由はレストとリラックスにゲージを全振りした設計思想から。 
フードを絞る為のコード調整機能は保温の為だけでなく行動着としてのディティールでもあります。 
カンガルーアノラックは停滞、レスト、ビレイ、を想定した設計です。 
しかし、風の強い日の朝。身体がまだ暖まらないハイクアップ時にも、またアウターシェルの上からも羽織れるようなギミックはしっかりと搭載しています。

カンガルーの特徴的なディテールとしてバラクラバの様に鼻まですっぽりと覆う深いフード形状があります。これはバラクラバ部が鼻に引っ掛かり、後ろに倒される事を防ぎます。このフードデザインで解消するこのギミックはウエスタンマウンテニアリング社の名品「フラッシュ・フーディ」の、調整コードを廃しなバラクラバタイプのフードデザインから。この素晴らしいギミックを更に大胆に深くバラクラバにしました。これによりコードを廃しながらも強風で後ろにズレにくくし、防寒性も高めました。 
そしてこの調整用なバンジーコード、実は結構重たいんです。コードとトグルを排除するだけで約10g程度の軽量化に成功しました。

フードの被りはやや深めに設定しています。それはアルパイン系にある、ヘルメットを被る設計と同じく、ニット帽子を被る事を考えてデザインしました。バルキーなニット帽であっとも突っ張らないゆとりのある深さとフード自体の軽量化も相まって肩が凝らずに軽い被り心地になりました。

表生地と綿生地の縫い付けもないのでフードを被った状態で寝転がっても突っ張る、という事がありません。この縫製に関しては後述します。

(画像は分かりやすいように表に載せていますが、カンガルーポケットの内部のイメージ画像です)

裾の調整用コードは体温の放出を抑える為にも、ビレイする時のたくし上げにも必要です。 
レストに全振りしたカンガルーですが故に、裾を絞る事ができる調整用のコードを装備しています。

カンガルーポケット内、底部の左右にある小さなループタブ。この間にバンジーコードを通し調整用のトグルが付いています。裾を絞るのにコードは全周は必要ありません。前部のみの、短い稼働距離の為に短いストロークで確実に絞れます。

レスト、そしてグラムカウンター的に振るのであればバンジーコードを簡単に取り外して軽量化ができるようなギミック。これはコードの交換も容易に行えるメリットがあります。

カンガルーポケットの上部にはキーフックを装備しています。

朝起きて、大切な鍵を寝袋の中から探すようなことはありません。

もちろん、寝落ちした時も大切な鍵はポケットの中から落ちる事はありません。

これもレストに全振りしたカンガルーらしいギミックです。

このカンガルーポケットは山上のテント場においてはサコッシュ・キラーになり得る容量を備えています。

スマホ、バッテリーだけでなく、グローブや帽子、そして売店で購入したペットボトルの飲料水、食料など、全てポケット内に飲み込みます。

そしてカンガルーポケットは使い捨てカイロや白金懐炉などの発熱ガジェットを左右の手で共有する事ができます。これは地味ながらもカンガルーポケットの利点の一つ。

他にも袋飯を蒸らす時もカンガルーポケットは活躍します。寒い時期であれば暖を取りつつ袋飯を調理でき、熱源を効率よく使う事ができます。

そして裏側の事なので見えないですが、カンガルーポケットの留口の裏側、綿の中で見えないですが補強材にCTF3 0.5ozを使っています。キューベンファイバーって実は裏側に使う補強材に最適なのです。 
イベントで持っていくサンプルのカンガルーは捲って見れます。

そして縫製について。

これはカンガルーアノラックの、最も個性的且つ、先鋭的なディティールでもあります。

「着心地は縫製で作れる」

ガンガルーは着たままでも寝れるデザイン。寝返りを打っても丸まっても、伸び上がってもストレスフリー。

カンガルーのコンセプトの一つに

「着たまま寝れる。そして寝返り打てる、伸び打てる」

というのがあります。

そんな着心地の秘密は縫製にあります。

様々な化繊インサレーションの縫製を研究しました。名品と言われるいくつかの化繊インサレーションウェアを裏返し、時には解いてバラして。

その中でマスプロダクトの縫製とは違う、クラフトギアプロダクトだからできる縫製技術でカンガルーは作りました。

マスプロダクトの化繊インサレーションウェアは表生地と綿生地の縫い合わせ点を外周以外、ボディの中で数カ所取るのが一般的な製法です。


この縫い付け点が多ければ多いほど、一般的な強度は出ますが、可動域が制限され、腕を上げた時、体を捻った時などに突っ張りが生じます。中にはグログランテープで数センチのブリッジを作り、稼働幅を持たせて突っ張りを防ぐギミックもありますが、テープの長さを超えた可動になると結局は突っ張りが生じる事になります。

カンガルーアノラックは外周以外の表生地と綿生地の縫い合わせ点が

鳩尾部1点

背面部1点

首裏部1点

ボディ内では計3点のみ。

表生地と綿生地の自由度。これが着心地に大きく作用します。

ストレッチ生地を採用しなくても、縫製と工夫で着心地は作れます。

今まであまり縫製について語られてこなかったので、テキストだけでは伝わりにくいと思います。

ギアマニアにもエキスパートなULハイカーにも是非、カンガルーを見てもらいたい。ただのプルオーバージャケットじゃないな、って思ってもらえたら嬉しいです。

そんなカンガルーのイベント限定カラーカスタムモデルです。

⚫︎カラーは10色の中から3色選べます。 
⚫︎生地の裏表(マットorグロス) 
⚫︎リバーシブルです。 
⚫︎タグ位置も選べます。

他にも

使用しているClimaSheeld2.5ozという化繊綿。

なぜJMWがこのマテリアルを選んだか。

そして、北米のガレージメーカーがこぞって採用しているか。

ここら辺の素材話も面白いので是非、イベントなどでJMWのブースに来てくれたらお話しします。


ざっくりとお話しすると「綿に張りがある」って事です。


張りがあると何が良いのか。


張りがあるので

表地と裏地の間で綿が動かなくなります。

張りがあるので

キルトステッチを入れなくても綿ズレが少なくなります。←コールドポイントが減るので同じウエイトの綿でもロフトが潰れずバルキーなシルエットを保ちます。つまり、同じ綿でも寒さを防ぎます。


張りがあると何が悪いのか。


張りがあるので

綿の弾性が高く嵩張ります。


何を得て、何を捨てるかのトレードオフ。

みんなのハイキングスタイルに合わせてみて下さい。


他にも使ってる糸(フィラメント?スパン?太さや素材)や針のタイプ、番手(針の先端形状や針穴の大きさ等、ミシン針もサイズだけでなく色々とあるのだ)縫い方等、イベントなどでJMWを見かけたら何でも聞いてくださいな。

使用期間は秋から梅雨時期まで。化繊だからこそ使える期間が長いのも道具としてカンガルーの良さだと思っています。

JMWの化繊インサレーション、「カンガルーアノラック」

イベント限定で販売しているプロダクトゆえにwebでの解説が遅れてしまいましたが、ご覧の通り、書き切れませんでしたw

多分、まだ書いていない事がいくつかあります。 
思い出したら書き足していきます。

ひとまず、今後も加筆修正しながら解説ページをより分かりやすいものにしていきますので、たまにページを開いてみてくださいね。

んー、やっぱりLiveで話す方が楽だなw

やっぱり写真じゃ伝わりにくいよねw 
(縫い合わせがされてないんだよ!ってわかるかな?)


(3/4/2022)