2024/09/28 10:02
#2 東北自然歩道バイクパッキングがようやく火蓋を切る! 徒歩移動でしか旅をしてこなかった僕らが自転車旅の楽しさを東北の風を受けながら全身全霊で体感。 ローカルストアでローカルフードを堪能して、ローカルソウルに乾杯! 台風におびえながら初めて自転車を使ったタープ設営にトライ! 全世界の読者の皆さまお待たせしました。 僕らの福島タイフーン第2話開幕です。 「白河で朝ラーメンを絶対にキメる…!」 8月14日AM8:00 そんな野望に満ち溢れた僕の心は、お目当ての白河ラーメン屋さんの玄関に貼られた「朝ラーメン売り切れました」という無慈悲なA4用紙にあっけなく打ち砕かれた。 白河の関所をふらふらで出発した僕とミホさん(my angel wife)は白河駅を経由して南湖公園近くの白河ラーメン屋さんに来ていた。 お盆休みもあってか長蛇の列ができており、朝ラーメンは早々に完売したようだった。 夢に満ち溢れていた頃のぼく うなだれているぼくの肩をポンと叩いたのはミホさん。 彼女は愛車であるストラグラーにまたがり、ハンドルを握り締めペダルに足をかけると、 相変わらず変な関西弁で一言。 「うちらチャリやで。」 ああ…そうか。自転車だから寄り道はいくらでもできるのか…。だから彼女はめげずに前を向いているんだ…! ハイキングだったら致命的なミスだけど自転車なら進める距離はぐんと増えるから予定変更なんてお手のものなのだ。 数件ラーメン屋さんを巡ったが結局どこにも入店できず、腹ペコだった僕らは近くのセブンイレブンでモーニングをした。 福島県産アスパラガスを使用したおにぎりなどローカルフードがコンビニにもあった アメリカの広大な荒野を駆け抜けるバイクパッキングへの憧れはとてもある。 けど自然と町の距離感が近く、補給がかなり楽な日本は僕らのようなバイクパッキングビギナーにはとびっきりな舞台。 日本に生まれて良かったとひしひしと実感 南湖公園から289号線を東に進んでいくと、これぞ日本よと言わんばかりの田園風景が広がっていた。 田舎育ちの僕らには見慣れた風景だ。 けど豊かな自然はあれど田んぼがほとんどない高尾に住んでいる僕らには久々の光景だった。 柔らかな緑の中に金色の稲穂がゆらゆら揺れている。 ありきたりの景色ではあるけれど、やっぱり落ち着く。 「休憩しちゃおっか」 というぼくの提案に大賛成のミホさんは自転車を降りて大きいチョコチップクッキーを頬張った後に、用水路に足を浸して気持ちよさそうに深呼吸をしていた。 こういう余白を楽しみに僕らは旅に出発した気がする。 膝から下が無くなったわけではない。ぼくの写真の撮り方が悪い… ひと休みして峠を越えて気持ちよく下っていると、きつねのしっぽと書かれた一軒の和菓子屋を通り過ぎた。 ぼくはブレーキをかけて後ろを振り向くと、ミホさんも止まっていた。 お互い目を合わせて黙って頷き、和菓子屋さんまで引き返した。 創業200年近くの老舗「坂本屋総本店」で看板メニューのきのつねのしっぽとロールケーキを頼むと「お店で食べていっていいよ」と(おそらく)大女将から言われ、腰を下ろした。 大女将のお話を聞くミホさんとかじられたきつねのしっぽ。ヘルメット着けたままだよ。 どちらのお菓子も美味しかったけど、それ以上に大女将との会話が楽しかった。 出発前に90歳を越えているとは思えないほど元気な人生の大先輩から「遊べるうちにうんと遊びなさい」と助言をいただいた。 うーん、胸に沁みるぜ! 山や自然は逃げないけど、僕らの身体に残された時間は有限。 けど焦ることなかれ。旅ではこういうゆっくりした時間が良い思い出になったりする。 PNTでは街に降りると必ずゼロデイはとったし、進むのも遅い僕らは日数がかかったけど、その分たくさん思い出が増えたと思う。ハイキングをしに来たのだけど”歩かなければいけない”というわけではないので観光やグルメ、寄り道を結構楽しんだ。 ぼくらは必要以上に元気に「行ってきまーす!」と言って、手を振る大女将に見送られながらお店を飛び出した。 真夏の福島は暑かった。それはもう暑かった。 まさに「アツが夏いぜ!」だった。(松本大洋サイコー!) 東北自然歩道を旅先に決めた時は「避暑地やー!涼しい東北に逃げるでー!」と灼熱の関東にグッバイする気でいたが、今年の夏は東北までぼくらを追いかけてきた。 マグマのように煮えたぎったコンクリートからの照り返しは、じわじわではなくガンガンと体力をすり減らし寝不足バリバリのぼくらに容赦なく襲いかかってきた。 暑さにやられたのか、脳内ではBOY MEETS GIRLを全力で踊るSAMがぼくの集中力を削いでいた。 そんな灼熱のバイクパッキング初日は100km移動した。 100kmを目指したというわけではなく、その日の宿泊地に向かうために100km踏んだ。 何を隠そう仁井田本家が初日の宿泊地だからだ。 出発までの準備期間が4日しかなかった事と、お盆ということもあって郡山周辺の宿泊施設の予約ができずにいた。 そんな迷えるアラサー子羊の僕らに救いの手を差し伸べてくれたのが仁井田本家の女将ことマキさんなのだ! にいだしぜんしゅが大好きな僕らはひょんなことからマキさんと出会い、高尾にマキさんがイベントで来た時にはふたりでお手伝いをしたりもした。 その後もこうやって僕らを気にかけてくれている。本当に嬉しい。 高尾で行われたイベントの様子。すごく楽しいお手伝いになった。 紺色と灰色が混じったようなコンクリートのように重い雲がごろごろと唸りをあげていた。もちろん台風が接近しているので風も強い。 うむうむ。 こういう時の陣形はひとつ!キャスケット張りの設営に取りかかるぞ! 雨風に強く、設営もシンプルなので悪天候時にはキャスケット張りがおすすめなのだ。 ポールではなく自転車を使っての設営は不慣れではあったけど、基本的にはポールを使っての設営と同じなので案外楽で困ったことにはならなかった。 そしてこれが自転車を使ったキャスケット張りである! どジャアああ〜ン!雨ニモマケズ風ニモマケズなキャスケット張り。新色のpail pinkは優しいピンクで良い色だ。 キャスケット張りは耐候性が高い反面、移住空間が少し狭いけど、8x10ならふたりでも充分な移住空間が確保できる。 大満足な設営にニヤニヤが止まらずシャッターをきっていると、雨がぽつぽつと降り出してきた。 早々に桜色のタープに逃げ込む僕らは雨がふってもまだまだニヤニヤしていた。 マキさんから差し入れで頂いたにいだしぜんしゅの夏の純米吟醸が待っていたぼくらには雨なんてお構いなしで楽しむ準備ができていた。 ぼくらの宴会会場。大好きなマイバイクを見ているとお酒が進むのだ。 いつの間にか大粒になった雨が天井に落ちてくる。 強風で動物の足音みたいにバタバタと音を鳴らすタープ。 それに負けじとゲコゲコと頬をふくらますカエルたち。 松尾芭蕉センパイなら風情を感じて俳句を読むに違いない。 ふたりで少し俳句を考えてはみたものの、「餅は餅屋!」と早々に諦めたぼくたち。 おちょこをグイッと飲み干して、ゴロンと横になって「良きかなぁ」と言って満足げに目をとじた。